Thief レベルデザイン分析
2014年発売だが、1998年から続くThiefシリーズのリブート作品
Thiefは2012年発売の名作・Dishonoredに影響を与えた。
ThiefのChapter2をエンカウンターアリーナごとに分析してみた。
〇自明度別のレイヤー設計
この手のサンドボックスを設計する際、重要なのは自明度の違うレイヤーを複数レイアウトに盛り込み、何度もリトライするうちにより深い発見が生まれることで攻略の達成感に繋げたり、自明度の低いレイヤー発見が観察に対する報酬として機能することでエンゲージメントを高める効果を生むことだ。
このエンカウンターアリーナのレイアウトにはざっくり3つのパスが存在し、自明度の高い順から1,2,3となっている。
3の溝のパスはかなりレイアウトの奥にあって、目の前までいかなければ気づけない。レイアウト自体もそうだが、手前のフォグエフェクトも意図的に奥を意識させないように置かれている可能性が高い。アートがデザインとよくコミュニケーションできていて偉い。
*色が濃いほど高位置
〇ジオメトリによるビジュアルランゲージ
隣接するエリア内を仕切るフェンスは飛び越えられないことを理解させるため尖ったシルエットを採用している。
〇色によるビジュアルランゲージ
青は掴んで登れる構造物一般。また青い格子はカギ棒を引っかけられるスポットのサインポスティング。この青が素晴らしいのは遠くからの視認性は低く近くからの視認性は高いこと。またメッシュのマテリアルが青いのではなく、金属の反射だけが青いので、視認性が高いのに不自然さを比較的誤魔化せている点がかなり偉い。コミュニケーション点+1。ところで自然界の青のほとんどは色素ではなく構造色で作られているという話を聞いたことがある。もしかしてそこからヒントを得たのだろうか。
ただし問題点として、視線誘導用のジオメトリに使われているダクト類も掴めそうに見えて掴めないという誤認にもつながっているので、効果は一長一短とも言える。
〇視線誘導のサインポスティング
ダクトの中という絶対にライトが必要なさそうな場所ではあるが、アイレベルより上にライトを置くことで上に道があることをサインポスティングで知らせている。青パイプと比べるとかなり明示的なやり方だ。
〇単線パスの設計
Thiefのレベル全てが複線設計ではなく、単線のパスのレイアウトも存在する。この例においてはゴールデンパスは一本だが、サイドパスが存在する。ゴールデンパスはUI上に表示されたオブジェクティブと光るコレクティブルに導かれているため自明度はMAX。ただし不自然に開いた左手のネガティブスペースにはこれまた不自然なクレーンが置いてあり、登ってみると案の定コレクティブルが配置されている設計になっている。
強いゴールデンパスの誘引と不自然なネガティブスペースの組合せで対比を作ることでサイドパス発見の達成感を引き上げている。
〇ポイントオブノーリターン
UE3で作られたこのゲーム。時代的にパフォーマンス管理が厳しいのか、ポイントオブノーリターンをよく見かける。自由にどこまでもバックトラッキングできる感じではなく、しょっちゅう戻れなくなる。かなり小刻みにメモリに載せるレベルの管理をしている印象。
ここではダクトの中を滑り降りて戻れなくなる、という一点ものっぽい仕掛けになっている。使いまわしはしているのだろうか。
〇屋内パス設計
このエンカウンターアリーナの開始地点は3方向へフォークしている。奥が明るく左は上階から続く階段なので、この二つは自明。かつ右側も上から降りてくる際に見えるのでこれも自明。特段優劣はなく「お好きなパスをどうぞ」という設計。真ん中のパスを選ぶと高所から視界も確保でき、敵も1体だけで常に自分の視界に敵を入れておけるので一番楽。
この場合左の会談を降りていくルートはキャラ会話を聞いて物語報酬を得たい人向け、真ん中はゴールデンパス、右側は降りてすぐに小さい報酬が落ちてる以外特にメリットが薄いので、あくまで攻略手段に幅を持たせるための余白的な意味合いが強い。設計意図としては真ん中に誘導したいが、自分で発見したという達成感を持たせるためにあえて「劣った選択肢」として左右を付け加えたというところだろうか。右手の報酬以外は3パスの合流地点に集中しているし、右手の報酬も開始地点からすぐにあるので、FOMO(Fear Of Missing Out)が起きづらいようになってはいる。
高低差を利用してうまくアドバンテージを取った、という達成感は多少程度あるが、あっさりしすぎて逆に他のパスの存在意義が気になりすぎてしまった。もうちょいゴールデンパスの解法に取組甲斐のあるタスクがほしい。
〇クールダウン
死体処理用のフックに掴まって移動するスクリプテッドシーケンス。暇や。。。
それなりに緊張感のあるエンカウンターの後なのでクールダウンがあるのはうれしいが、シーンのテンポが遅くてやや暇にすぎるきらいがある。12年前だから仕方ないか。
〇視界の限定されたコリドー中心の重厚長大アリーナ
バンテージポイントが少なく全貌も把握しづらかったのでスクショは取らなかったが、こんな感じのレイアウト
Chapter 3キャバレー
①開始地点 スクリプテッドシーケンスになっている。
①のアリーナは軽めの2フォークで構成されている。そこから先はかなり複雑に二叉路と梁の立体交差が絡んでいる。しかも短い間隔でグルグル方向転換させられるので進行方向が分からなくなる。その代わりに道なりに進むしかないので迷うことはない。
より隠密性の高い道を取るとまったく会敵しないで進める代わりに報酬もない。発見や安心感自体が報酬といえる。またNPCが歩きながら会話する様子を遠巻きに盗み見ることもできることもカウントにいれていい。
目的地の娼館に着くと、正門から侵入するルートと壁の割れ目から侵入するルートがある。正門から入ると会敵するが、割れ目から入ると見つからずに入れる。
このレベルは常に会敵するルートと裏をかくルートに四度分岐する。同じテーマを反復しているが、裏ルートの隠し方はアイレベル上のパイプ、アイレベル下のダクト、梁の道に誘導された先の壁の裏、正門から離れた壁の割れ目のダクトに登る、とそれぞれ異なる解法が要求される。反復はマンネリ化よりも成功体験の蓄積をもたらす感じがある。
*色が濃いほど高位置
② NPCがプレイヤーを待ってシーケンスが進む。おそらくトリガーボリュームでシーケンスをチトリガーし、無視してもその先に別のトリガーがあってシーケンスが滞りなく進む仕組みか。
③ シーケンスのシメ。ここでもNPCはプレイヤーを待っているが、立ち止まって会話を聞いてる手持ち無沙汰の間に壁のひび割れを見つけてこっそり進入でき、イベント進行とレイアウトがうまく連動できているのがえらい。